僕の心の余裕のなさは、普段の生活にも如実に現れていた。 この村に来て・・・・、いや来させられてからというもの、僕は 同じ服を着っぱなしだ。しかし何の用意もなくこの村に住む事に なった僕が、着替えなど持っているはずもない。 その問題に対して考えられる方法の1つは、木の皮をはいで 丹念に紡いでいく方法。そしてもう1つはヤツらの皮をはいで、 毛皮を得る方法。もちろん僕は前者のための技術など持って いないので、採り得る方法は自ずと決まってくる。 斧を手にして夜の森へ繰り出していくと、間もなく獲物がやって きた。いつも高飛車な態度で話してくる、メスの羊だ。これから 冬へ向かうところで、いい毛皮が採れそうだ。 そして、僕が初めて経験する・・・・・・殺し。 ここから先のことを想像するだけで、背中に冷たいイヤな汗が 流れていく。斧を後ろ手に隠して、いつものつくりものの笑顔を 見せようとするが、なぜか顔の筋肉のこわばりが気になる。 「・・・ちゃん、おたくエイブルシスターズって知ってる?」 何だ?初めて聞く名前だぞ!混乱して立ち尽くす僕を一瞥すると 羊が立ち去って行き、僕は千載一遇のチャンスを逃してしまった。 これから徐々に気温が下がっていくと言うのに・・・、それを思うと 心も足取りも重くなってくるのだった。 能力姉妹って何だ? ■TOP