そして今日も僕は、夜の「散歩」に出かける。何度も危ない目に遭いながら、 よく懲りないものだと自分でも思っているが、真実に一歩でも近付きたいのだ。 なぜ今まで気がつかなかったのだろう。僕は、足をとめた真ん前にある建物を 見ながら、自分がこれまで余裕が全くなく、あまり周囲を見回していなかった 事に、自分に対する若干の嘲りを感じていた。 ギリシャ彫刻を模したであろう石柱に飾られたその建造物は、周囲の風景との 対比で一層の荘厳さを見せつけ、何かの宮殿をも連想させてくる。中央部の 玄関口と思われる扉は開放されており、中に照明が灯されていることから、 誰かしらが建物の内部にいるようだ。 それでも中に入るには躊躇いがある。しかし今まで何度も危ない橋を渡って きたのだ。今更迷って何になる!そう自分を鼓舞しながら、玄関をくぐり抜け ロビーに立入った瞬間に、後悔と血が凍りつくような恐怖が襲い掛かった。 自分の身の丈くらいはある巨大なフクロウが、大きな目を見開いてじっと僕を 見つめているのだ。鋭い嘴と爪は、体長に比例して巨大になり、しかしその 鋭さは変わる事がない。脚で頭をつかまれたならば、僕の頭蓋骨など簡単に 砕かれてしまうだろう。目を固く閉じ覚悟を決めているが、フクロウはまだ 襲ってこない。獲物(僕)の様子を窺っいながら、何か喋っているようだ。 「・・・・・・村の博物館へようこそ!」強者に口から出る丁重な言葉というものは、 一種独特なものがある。そのときの僕は完全に迫力に負けていて、その後に フクロウと、どのようなやりとりをしたのかさえ覚えていない。 気がつくと建物の外にいて、散歩の途中に掘り当てた化石を奪い取られていた。 とりあえず助かった・・・・。 秋風も吹き始めた季節というのに、着ているものが汗でびっしょりとしていた。 ■TOP