ゆきだるまがしゃべりかけてくる事に腰を抜かすほど驚いたのは、 
もういつの事だか忘れてしまいました。 
今では、もっと考えなければならない事があるから。 
この村に連れてこられて初めての雪。 
雪の少ない土地に育った私には、それまでの事を忘れさせてくれる、 
言ってみれば神様からの恵みとも思えるものでした。 

ゆきだるまを作ろうと、私も最初から考えていたわけではありません。 
しかし住人の誰もが、雪合戦をしようにも応じてくれそうもない状況で、 
何か忘れたい事もあって雪玉を蹴り歩いていたら、何となく思いついただけです。 
しかし調子に乗って転がし続け、自分の身長ほどの雪玉を作り上げたときに、 
この大きな雪玉を積み上げる術がないことに、私は大きな失望を覚えました。 
それでも何とかできるかもしれない!そう思い2つの雪の塊を近付けた瞬間に、 
あろうことか勝手に雪玉が持ち上がり、ゆきだるまになってしまったのです。 
「ふぅ〜、ごくろうさんダス」 
誰かが手伝ってくれたのかと周囲を見回しても、誰もいませんでした。 
その言葉が、目の前の雪の塊から発せられたものだと認識するまでに、しばらくの 
時間がかかったことだけは覚えています。そしてその後にやってくる驚きと、 
どのように反応して良いのかわからないほどの驚き。 

しかし自分に害を与えそうもないこともあり、またうまく形を作ってあげれば 
喜んでくれるので、村での退屈な時間を私を持て余していたので、ついつい・・・・。 
そんなある日、ふと考えてみたのです。彼らは生き物なのか?それとも・・・・? 
そしてそれを考えつつ散歩に出てみると、別の事実に気づきました。 
『この村では土の上に雪が積もらない!』 
いつでも、まるで選んで集まったかのように雪が積もっているのです。 
積もったところに餌場がある? 
学校に通っていたときに図書館の図鑑で見た特殊な生き物。あるときは小さな 
生き物として存在して、また集まってしまうとひとつの組織体として生きるもの。 
この村には、そんな生物が冬になると雪のように舞い降りてくるのでは? 
そして自力で集合することができず、何らかの力で偶然に集まるときを待っている? 
幸運なことにそれらが草食であると推定するだけの材料は、木々の上や草地に 
選択的に積もっていることから窺い知る事ができます。 

でももし彼らに天敵がいたら・・・・・・。そしてそれらは当然肉食と言う事では? 
歯の音の合わないような夜を迎える材料が、またあらたに増えました。 
そして祈るように、春を待つ日々を送っているのです。







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