ここで暮らすこと半年。もう涙は枯れ果て、悲しみの感情も忘れかけた頃の出来事だった。 …僕は涙を流していた。 決して悲しいわけじゃない。 でも感情とは裏腹に、針の飛んだレコードのように、繰り返し繰り返し泣いていた。 今思えば、アイツに会ってからだ。…あの奇妙なナリのキモいアイツ。 自分のことを『師匠』と勝手に位置付けるアイツ。 そんなアイツに呪われたかのように、得体の知れぬ者に操作されているように、僕の涙は止まらない。 そんな僕の様子に、見て見ぬフリをする住人。 あるいは「ねぇねぇ、これ買ってくれない〜?」とこちらの状況にお構いなしに、ボッタクリ商売を始める住人。 またあるいは、涙を流す人の前で「ふぅ…」とため息を吐き、自分の小言を一方的に語るのみの空気の読めない商売人。 …改めて感じた。やはりこの村には僕の味方はいないのだ。 忘れかけてた悲しみの感情や孤独感が再び蘇り、僕は久しぶりに本当の涙を流した。 …偽の涙の上に。 ■TOP