決して脱出することのできないこの村で、僕は今日もまた一日を過ごしている。 

僕は家の近くに咲いている白いバラに水をやった。 

何をしてもこの村から脱出できない事を悟った僕は、今は普通に暮らそうと思っている。 
普通に生きている限り、僕に被害は無かったのだから。 

娯楽の少ないこの村で、僕が打ち込んでいるのはガーデニングだ。 
綺麗に咲いている花を見ていると、村から出られない事も少しの間忘れられた。 

さっき水をやった白いバラの近くに、枯れた花があった。水をやり忘れたのだろう。 
僕はあーあ、と思い頭を掻いた。 
すると、頭を掻いていた手に何かがあたった。花だ。 
このあいだ花を見つけた時に、綺麗だったので頭につけておいた花。 
目の前の花は水やりを2、3日忘れただけで枯れている。 
しかしこの頭につけている花は、一ヶ月くらい前に摘んで、そのまま頭につけたのだ。 

おかしいじゃないか。 

まさか。この村の生態系を自由に支配する者が居るのではないか。 
もしかしたらその存在に動物たちは消されているのかもしれない。 

僕はこの村から脱出する意思を取り戻した。







■TOP