ぼくは気づいた。 
この村には不思議な「エネルギー」が潜んでいることを。 
気づいたのはここに越してきてすぐだ。 
初めて虫を捕まえ、博物館に寄贈した時のこと。 
たしかにあのフクロウは虫を自分のポケットにしまった。 
しかし、虫が展示されているコーナーに行くとその虫はすでに 
そこにいた。フクロウはあの場所から動いてない。 
何故?「どこでもドア」みたいな原理があるのか? 
しかしぼくはあまり木にも止めなかった。この村では通常考えられない 
事が起きるのだから。 
まだそのエネルギーを感じることはよくある。 
手紙。 
手紙は毎日のように届く。しかし届けられる瞬間は見ていない。 
春、ずっと家の前で配達の瞬間を見ようと待ち構えていたことがある。 
しかし手紙は来なかった。 
仕方ないのでぼくは家に戻った。 
次の瞬間― 
『ピコーン ピコ−ン』 
・・・。ポストが鳴り出した。誰もぼくの家には来ていない。 
なのに何故? 
この世界には異次元空間があるのか・・・? 

そういえば― 
たまに村を訪問す奴ら。 
彼らは朝6時以前には見ない。それに気づいたぼくは1週間早起きして6時10分まで 
関所で彼らを待ったこともある。しかし、誰も現れない。 
一眠りしようは家に戻りかけた時だった。背筋が凍った。 
奴がいる―



そう、セイイチがいる。 たまにふらっと現れ、食べ物とデザインを交換していく奴だ。 ―で、でもいつの間に?この村には空と関所と海以外には入り口が無い。 しかも海か空から来るのは限られている。他の奴らは関所から入る以外に は方法が無い。 まだまだある。 住民達もだ! 何故すぐに家を作ったり、すぐに家を消たりして、この村に 瞬間的と言ってもいいほどのスピードで引越し出来るのか。 ぼくは確信した。 ―この村には異次元空間が存在する― 関係ないが、ぼくが起きている間、ずっと南側の斜め上から視線を感じる。 あれも「異次元の存在」なのだろうか。 そして、それを利用すればここから脱出できるかも知れない。 毎日同じことの繰り返し。 そんな世界からおさらばできるかも知れない。 ぼくはいろいろな知識を吸収しようとした。 この村に本は無い。ならパソコンだ。たぬきの店ではたまにパソコンが 売られている。あれを使えば・・・。 ぼくはさまざまな論文やファイル等をパソコンにダウンロードして 読みふけった。それだけでは足りず、今日、大学や宇宙関連施設の メインコンピュータに侵入した。
犯罪だとわかってはいた。しかし関係ない。 たとえ警察関係者が来てもここからは出れない。 そしてもしもとの世界に戻れればぼくはここから 解放だ。それなら懲役なんて安いものだ。 ――1週間後―― 警察が来た。そしてぼくは連行された。そして村を 出ようと門番に警察が話し掛けた。 「何か用でありますか?」 「はやく門を開けろ」 「近くの村へお出かけするDSどうしと、遠くの村にお出かけする Wi-Fi通信のどちらでお出かけしますか?」 「何を言ってるんだこの犬野郎。早く門をあけろ」 「どちらへですか?」 「ふざけるな!公務執行妨害で逮捕するぞ!」 ―やはりこの村からは出られないのか― ぼくも努力はした。墜落した宇宙人にワープについての話も聞き、 たぬきから大量にテレビやパソコンなどの電器を買い、さらに 宇宙船のパーツをパクって、転送装置を作った。計算では完璧だ。 しかし、起動しない。何度メインスイッチを入れても動かない。 スイッチのプロテクトは解除してある。だけど駄目だった。 やはりこの村に足を踏み入れた人間は帰れない。 また1人、帰れない人間が増えた・・・。 了 ■TOP