彼は、村いちばんの人気者 

村にきれいな花をたくさん植えて世話をして、ひとの頼みごとはこころよく引き受ける 
みんな彼の家に遊びに行きたがるし、誕生日パーティにもひっぱりだこだ 

彼は最近引っ越してきたばかりのわたしにもとっても優しい 
会うといつも笑顔で声をかけてくれて、すてきな家具やお花を贈ってくれる 

そんな彼だからわたしもつい、新しい隣人への不満を彼にこぼしてしまったのだ 

「ダンベルさんって いつもおこってるみたいで こわいんです・・・」 

彼はいつもどおりの笑顔でわたしの愚痴を聞き、慰めてくれた。 


次の日、彼から手紙が来ていた 

 「かれは もう きみを、 
  こまらせない から、 
  しんぱい しないで 
  だいじょうぶ だよ」 

どういう意味だろう? ささいな愚痴だったのに、ダンベルさんに話してしまったのかしら? 
彼に事情を聞かなければと、わたしは家を飛び出し、 


――そして 息をのんだ



つい昨日まで、ほんの10数時間前まで、すぐ隣にあったはずのダンベルの家が跡形もなく消えていた 残された看板の前で呆然と立ち尽くしていると、後ろから声が聞こえた。 「やあ、おはよう」 いつもどおりの笑顔の彼だった 「おはようございます! ねえ、ダン…」 ともかく彼に事情を尋ねようとする私を、彼は明るい声でさえぎった。 「ほら、だいじょうぶだって言ったでしょ?」 彼はあくまでも優しい笑顔で微笑む 「マールを困らせる悪いどうぶつなんて、この村にいらないんだよ?」 そう、彼は、村いちばんの人気者 彼には なんでも できる わたしは 彼の笑顔が  怖い ■TOP