僕はこの奇妙な村から逃げ出したくて、何度も引っ越しを試みた。 
しかし、何度引っ越しても結果は同じだった。 
村の形や住民は少しづつ違っていても、 
同じ施設、同じ店員、同じ役人、同じ訪問者、同じ気候、同じ植物・・・・・ 
不気味なくらい同じような村にしか行けないのだ。 

そもそも、引っ越し先の村は、僕が適当に思いついた名前が実際についている。 
なぜこのような奇妙な事が・・・・・・・ 

僕はハッとした。今まで何という村かを聞かれていたのでつい答えていたが、 
僕の住んでいた街の名前を運転手に言えば連れていってくれるんじゃないか・・・ 

僕は急いで役場に行き、引っ越し手続きをした。 
そして迎えに来た運転手に 
「○○県の××市まで!!!」 
とまくしたてるように言った。 
すると運転手は 
「・・・はあ?何言ってんだ、兄ちゃん。」 
と返されてしまった。 
運転手は全く心当たりが無い様子だった。 
むしろ、県や市といった言葉が通じなかった。 
僕は仕方がなく、また適当に思いついた名前を言った。 
「あいよっ」 
と運転手は威勢良く言って、車を走らせた。 
僕は少なからず運転手に対してうらめしい気持ちを抱き、ミラー越しに睨んだ。 

「・・・・・・え?」 
どうして今まで気づかなかったのだろう・・・ 
その運転手の顔は、何度か喫茶店で見かけたあの運転手の顔だった。 
「・・・・・・!!!!!」 
そう、僕はいくつもの村を移動するとき、いつもこの運転手によって運ばれていたのだ。 
逆に、この人(?)以外の運転手を見かけたことはない・・・・・・・ 

・・・・・・・・・・・・・脱出は不可能・・・・・・・・・・・・・・・・ 

僕は全身から力が抜け、死んだような顔でタクシーに揺られていた。 

「着いたよ」 
運転手が僕に声をかける。 
僕はフラフラとタクシーを降りた。 
役場で手続きを済ませ、外に出たとき、同じ顔の村長がいた。 
「ワシがこの村の村長じゃ」 
声まで同じだ。頭がおかしくなりそうだった。 
僕は適当に挨拶をし、新しい自宅に向かおうとした。 
その時、村長がぼそりと言った。 

「これでわかっただろう?余計なことを考えるな・・・」 

ああ・・・・僕は馬鹿だ・・・・・・ 
始めからこの村長の手の上で踊っていたに過ぎなかったのだ・・・・・・ 







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