この村で生活することを余儀なくされてからどれくらいの時間が過ぎただろうか。 
僕は幾度なくこの村からの脱出を試みた。しかしその全てが徒労に終わるのみだった。 

そう…この村は外界から完全に隔離されているのだ。 
僕は精根尽き果て、虚ろな瞳で空を見上げていた。 
暫くすると風が強くなってきた。秋風が僕の頬を哀しく撫でる。 

すると風船が風に漂い近付いて来るのがみえた。 
よく見ると紐に箱がくくり付けられている。 
気になった僕はその風船を狸らしき生き物から購入したパチンコで撃ち落とした。 

箱の中身を見て愕然とした。うしのがいこつ… 
カルピ…。 

カルピは1ヶ月前までこの村に住んでいた牛の住人である。
ある日引っ越すと言ったきり家ごと忽然と姿を消した。 
以前にも引っ越すと言い家ごと姿を消した住人は何人かいた。 

しかしカルピがこんな変わり果てた姿で帰ってくるなんて。
おそらく誰かがカルピを連れ去り、頭部を切断、それを風船に付けて飛ばしたのであろう。 
正気の沙汰とは思えない。僕は膝をガクリと崩し泣き叫んだ。 

泣きやんだ頃には太陽はもう西に傾いていた。
僕はこの村に犯人がいる可能性があることを住人に伝える為にカルピの亡骸を見せて回った。 

しかし住人達はノーリアクション…。
つい最近まで一緒にいた仲間の亡骸を見せられて顔色ひとつ変えないのである。 

僕は住人を含めたこの村全体のあまりの不気味さに身震いした。 

そして見てしまった。
夕焼けで顔を真っ赤に染めた村長が、木陰からニタリと笑みを溢しているところを…。 







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