同居人が亡くなった。 この村で一人で暮らしていた僕の家にいつからか枕を並べていた彼。 部屋が増えた時、それぞれ一室づつ分け合った彼。 僕がこの村で唯一話したことのない彼。 その彼が亡くなった。 昨日はカラフルな服を着ていたのに、今日は真っ白な服だ。 これが死に装束と言う物なのだろうか。 今まで漫画やアニメでしか見たことがなかった天使の輪、 綺麗な髪に浮かぶ光の輪ではなく、漫画などで死んだ人の頭上にあるものが、 それが横たわっている彼の頭上にあった。 今日まで言葉を交わしたことはなかったけれど、 確かに彼はこの村に暮らしていた。同じ家で暮らしていた。 たまに僕の部屋の家具が彼の部屋に移動していたこともあった。 その時は腹が立ったけど、こうして見るといい思い出だ。 彼との奇妙な生活を思い出すと涙が溢れてきた。 彼を埋葬してあげよう。村中から綺麗な花を集めてきて飾ってあげよう。 そう思い、僕はスコップを片手に表に出た。 … 随分と時間が掛かってしまったが、埋葬の準備はできた。彼を埋めてあげよう。 僕は彼がこれから安らかに眠れる所へ連れて行くために彼を持ち上げようとした。 …持ち上がらない。 毎日穴を掘り、斧を担いで歩き回っているから体力には自信があったが、 彼はピクリとも動かない。 僕は自分の非力さに涙した。 共に暮らした者を埋葬することさえ出来ないのか。
気がつけば夜が明けていた。 あのまま眠ってしまった様だ。彼をそのままにして。 取り敢えず僕は家を出た。 日課となっている花の世話をしてからこの後のことを考えるつもりだった。 またこの村で一人ぼっちになってしまった。 寂しかったからうろうろしていたのかも知れない。 彼のために用意した墓穴が元に戻されている。 覚えがないが僕が戻したのだろう。 記憶がないのは気持ちが悪いが、たぶんそうだ。 違和感を覚え少し気分が悪い。 少し横になって休めば治るだろう、と思い部屋に戻った。 部屋の様子もおかしい。家具の配置が違う。 照明器具も見たことのない物に変わっている。 お気に入りのソファがない。 僕は屋根裏部屋に急いだ。 新しい同居人か?一人ぼっちにならずにすむのか? 屋根裏部屋には彼が横たわっていた。昨日亡くなった彼が。 新しい同居人はいない。 …もしかして彼は生きているのか? 話しかけても反応はないが、いつもの事だ。 よくよく見れば服装が違っている。天使の輪はまだあるが。 生きているならこの輪っかはなんだろう。 何はともあれ、彼が生きているのなら、僕は一人じゃない。 会話は出来ないけれど、ここから逃れる方法を探しているのが僕一人じゃないのは心強い。 僕は安堵し、また泣いてしまった。 さぁ、今日もこの村から脱出する方法を考えよう。 ……埋めなくてよかった。 ■TOP