今日もまた、どこからともなく現れた「住人」というのが増える。 
取り合えず僕はそいつがどんな奴なのか、此処に来た方法を知っているかもしれないという期待を少し持ちながらも家のドアをノックした。 

青く、アヒルのような風貌の奴だ。眼鏡をかけている。 

……眼鏡? 

まあこれは良いとしよう。そいつはダンボールの周りをうろうろしているだけで、中身を取りだそうとはしない。 
僕は先程抱いた期待を持ちながらそっと話しかけた。 


…残念ながら此処にどうやって来たかは教えてくれないようだ。いや、ボンと名乗った彼にもわからないのかもしれない。 
彼はまだ話している。しかし次の瞬間、僕は耳を疑った。 


「ね、ママ!」 


ママだと!? 
一体どこに居ると言うんだ?僕は辺りを見回したが、彼以外住んでいる人が見当たらない。 
こいつは一体誰に話し掛けた?こいつは見えるのか? 


まさか。 



僕の脳裏に一瞬よぎった。このダンボールの中身はなんだろう。どうして開けないんだろう。 



僕が彼の家を出ようとドアノブに手をかけたとき、小さなダンボールが微かに動いたような気がした。 







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