今日もイヤな一日が始まる。 

でも一日中部屋にこもって、考えていては頭がおかしくなりそうだ。 
もっとも外出すればしたで、おかしくなりそうな事ばかりなのだが・・・・。 

玄関の扉を開けて表に出たところで、僕は急に忘れ物を思い出した。 
様々な事で気をとられているせいなのだろう。仕方ない。 
むしろ遠出をしてから思い出すよりも、幸運だったと思わなければ。 

「??」 
玄関から家に入れない。なぜだろう?鍵をかけた覚えもないのに。 
いや、そういう次元の話ではない。扉に触れる事さえできない。 
そう言えば窓を開け放しだったから、そこから入ればいいか。 

そう思った僕が、歩き出したときだった。 
サバーッ 
突然に門の脇の土が盛り上がり、何かの物体が勢いよく飛び出してきた。 

今、僕の目の前には、僕に怒りの視線を向けた巨大モグラだった。 
ヘルメットをかぶりツルハシを抱えたそれは、怒りのためか全身を震わせ、 
今にも飛び掛ってきそうな勢いだ。 

「あ どうもはじめまして。わたくし リセットさんともうします。」 
見た目に対して、非常に紳士的な物言いに若干の戸惑いを覚える僕に、 
モグラが自分が何者なのか、そしてなぜ今出てきたのかを丁寧に説明する。 
要するに『セーブをせずに電源を落とすさないでくれ』という事なのだが、 
最後に「次からは 手加減なしですよ。そこんとこ よろしくたのんますわ。 
ほな!」と言うと再び土中に消えていった。 

あまりに唐突なできごとに、呆然とさせられていた僕だったが、気を 
取り直して家に入った。今度は何の障害もなく。 
しかしテーブルの上に置いてある財布を手にしたときに、重要な事に 
気付き一気に出かける気が失せてしまった。 

リセット?セーブ?電源?この村に来てから初めて聞く言葉だ。 
僕が眠っている間に、この村で何が行われているのだろう。 
急激に襲い掛かる不安から、僕はしゃがみ込み震えていた。 







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