この村に関しては様々なおかしな点があるが、その最たるものは、化石だ。 
断層や古い地層があるわけでもないのに、地面に化石がいくつも埋まっている。 
しかも、スコップで掘り返せる程度の深さに。大昔にこの辺りで大絶滅でも起こったのだろうか。 
まあ不思議ではあるが、金を得るには手っ取り早いので、僕は化石掘りが日課になっていた。 

ある日、村で事件が起きた。住民の一人が死んだのだ。状況からみて、殺された…とも考えられる。 
ビンタが自宅で、全身から血を流して事切れていた。チェーンソーで全身をなます切りにされていた。 
体の一部が切り落とされ、皮膚や肉はズタズタだった。 

彼の死から二日後、村は不自然なほどいつも通りだった。 
住民が一人殺されたとはとても思えない村の空気に、僕は戸惑いを覚えながらも日課である化石掘りを始めた。 
いつものように化石は考古学者を泣かせるほどあっさりと見つかった。 
ただ、その化石はやや変わった印象を受けた。やけに真っすぐな溝が、表面に認められたのだ。 
僕はハッとした。これは化石なんかじゃない。これは死んだビンタの骨なのではないか。 
大昔の生物に、まるで刃物で傷つけられたような真っすぐな痕が出来るわけない。 
僕はフータの所に骨を持って行き、溝があるから化石ではないと言った。しかし… 
「これはプテラの頭ですね」 
…何を言っている?そんな生物が生きていた時代に刃物なんてあるわけない。 
しかしフータは自分の主張を曲げることは無かった。 
「…まさか…」 
僕は化石の展示室に急いだ。そして一つ一つ念入りに見て回った。 
「なぜ気付かなかったんだ…」 
そこにあった化石には、明らかに道具で付けられた傷や穴があった。 
真っすぐな溝や傷、不自然に丸い穴… 
刃物や電動工具で付けられたとしか思えない痕があちこちにあった。 
「まさか…嘘だろ…」 

「知らなければ良かったのにねえ…」 
後ろを振り返ると、チェーンソーをもったフータがいた。 
次の瞬間、僕の体に激痛が走った。声にならない叫びをあげ、床を転げ回る。 
僕の意識は薄れていき、チェーンソーの回転する音が館内に響き渡った。 


「…これは猿の化石かな………ふふ…」 







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