あるのかも分からない出口を探して村をさ迷い、 今夜も疲れ切った足を引きずりながら帰路につく。 滅入る気持ちを慰めようといつものように安物のラジカセをつけた。 ラジカセといってもラジオが聞けるわけではない。 毎日試してはみるが外界と遮断されたこの村では電波は入らないようだ。 ラジオを諦め、たまにこの村を訪れる放浪のミュージシャンがくれたテープを入れる。 曲を選びながらふと彼の言葉頭をよぎった。 「また聞きにきてくれよな…まってるからさ」 また…来る? この村の住人ではない彼は、 自由にこの村と外の世界を行き来する手段を知っている…? もしかすると彼がいるあの席に… 純喫茶ハトの巣に秘密が隠されているのでは……。 僕はいても立ってもいられず家を飛び出した。 途中すれ違うフータの怪訝そうな視線を無視してそこへたどり着くと 奥の席のピアノへ……… 届かない。 手は虚しく空を掻くだけで、足は僅かな段差がどうしても乗り越えられなかった。 まるで見えないなにかに押し退けられるようで… その場所はバリアでも貼られているかのように僕を拒んだ。 肩を落とし喫茶店を出ようとすると僕の後ろで、 普段無口なマスターが嘲るように小さく笑った気がした。 ■TOP