もう何も、信じることが出来ない…。 この村は狂っている。 逃げ出す術もない。 唯一の出口には犬のような生物が棲んでいる。 やがて自分を試すかのように僕は門へ向かった。 それ以外に道は無かった。留まっていてもいずれ消されるのだ。 一歩ごとに、恐怖は足元から這い上がってくる。 恐怖に、全身を支配される。 しかし、門番の怪物から出た言葉は拍子抜けするほど意外なものだった。 「おでかけなさいますか?」 もしかして、外に出られるのか? こんなに簡単に? たしかに甘かったかもしれない。 そううまくいく筈がなかったのだ。 門を抜けた僕を待っていたのは、もう一つの狂った村だった。 人間の姿を目にする。 一年余り孤独に耐えてきた僕にとっては希望の光だった。 その少女が振り返る。戦慄が走った。 表情が、無い。 いや、正確には、顔が「固まっている」のだ。 もはや、人間らしさは消失していた。 そしてふと疑問が浮かぶ。 その答えに自ら凍り付く。 僕は。 僕の顔は。 ■TOP